別格!タミヤの1/25パンサー

 前 置 き
田宮俊作社長の著書「田宮模型の仕事」は、模型マニア以外にはほとんど話題にならない本ではないかと思っていましたら、これが好調な売れ行きを示したとのことです。

経済関係の雑誌などにも書評が取り上げられているのを良く見かけました。ビジネスとして模型会社経営を捉えた場合、なぜ田宮 ”だけ” がこんなにも成功したのか?この本はそれを教えてくれます。それは業種を問わず、すべての経営者にとって関心事であるはずですね。

私がこのWEB開設に当たり困ったこと、それは子供の頃に作ったプラモは「記憶の中」にあっても、実物はもう存在しないことでした。これでは文章だけの説明になってしまいます。

後方は1/35のキングタイガー、一部だけ見えているのはパンサーと同時発売のロンメル

そこでやパンサー以前のお話には、偶然捨てないでいた組み立て説明書などを使っています。これらは版権がメーカーにあるため、各社にお伺いをたてようとしたのですが、ほとんどの会社はもう残っていませんでした。残っていたのはタミヤ・日模・青島だけでした(日東はちょっとニュアンスが違う)。 タミヤの模型については、このサイトでもプラモ、R/C両方面で数限りなく取り上げていますが、それは私が作ってきた模型が必然的にタミヤに「なってしまっただけ」のことです。それだけタミヤは魅力的な模型を作り続けて来ました。

なぜ ”タミヤだけ” がこんなにも成功したのか?・・その答えは簡単です。タミヤが作り手、遊び手が要求している以上の答えを用意して来ただけのことです。それは品質であり、工夫であり、レース、イベントなどのマネージメントであり、アフターサービスなどの顧客満足であるわけです(価格は魅力的とは言わない)。それは魔法でもなんでもなく、ただやろうとする意思と実行力が、他の会社に比べて圧倒的に強固だったからに他なりません。

ちょっと前置きが長くなりました。さて、「田宮模型の仕事」では特に戦車モデルについて、いかに実物の取材が大切か、ページを割いています。そして実物の取材によって初めてモデル化されたのが1/25パンサーだと言う事も。

1967年7月(私は中学2年)に発売されたこのモデルは、私にとっても特に思い出深いキットでした。

 
 パンサーはどこが素晴らしかったか・・・。 
精密さという面では、全てです。・・・プラモデルは箱を開けた瞬間がまず大切です。パンサーはまず本体上面、特にエンジンカバー回りの表現が圧巻でした。全体にほどよくかけられた梨地仕上げも品質感を高めています。小箱には連結式のキャタピラパーツがぎっしりと詰められているのが見えます。この1/25パンサーはひとめ見ただけで今までのプラモとはまったく違う次元であることを理解できました。
サスペンションの動きがとてもしなやかでした。・・・サスペンションは一つ一つがヘアピン状に折り曲げたピアノ線で支えられていました。動きはとてもしなやかで、段差を乗り越えるときの転輪の動きはなめらかでした。ちなみに、リモコンパンサーは後部に二つのモーターとギヤーBOXを置くため、テールヘビーでしたので、やや後ろ下がりの姿勢をとります。そこでひとつひとつのピアノ線を微妙に曲げながら、やや車高を下げた前傾姿勢をとるようにしたところ、よりたたずまいがよくなりました。
あえて言えば、ここが情けなかった。
激賞ものの1/25パンサーですが、あえて言いたいことがあります。
初期ロットはキャタピラに不良品が多かった。・・・連結式のキャタピラの中には、樹脂が良く回っていないのか不完全なものが1割ほど入っていました。このため、走り出すとすぐあちこちで切れてしまい、アフターサービス係に2回ほどキャタピラを注文しました。また、動きが渋い部品が所々にあり、キャタピラがだらんときれいに垂れないところが、非常に気になりました。

横から見たときわずかに向こうが透けて見える。・・・シャーシ側面の深さが十分でないため、真横から見たときに向こう側が見通せるのはやや興ざめでした。これは設計ミスではなく、おそらく生産技術上の限界(金型の掘り込み、樹脂が回る限界、あるいは抜きテーパの都合)ではないかと思いますが、どうなんでしょう。

なぜか駈動輪は後ろ。・・・実車では前にある駆動輪が後ろにありましたね。もちろん判っていて設計しているものでしょうが、なぜなんでしょう?おそらくギヤーボックスが入らないなどの理由かと思いますが、これは走りの姿勢にも影響するので、今考えるとここまではぜひやってほしかった。

その後のチーフティンではずいぶん改良が・・
パンサーの後に出たチーフティンはやはり1/25の堂々としたモデル。キャタピラは改良され、動きも垂れ具合もスムーズ。パンサーの欠点は、ずいぶん解消されていきます。

キットはリモコンタイプですが、このリモコンを中に隠しても走るよう、裏に後付でスイッチを組み込んであります。撮影は1969年3月、まだ雪が残っていますね。 

写真ではとりあえずオリーブドラブを吹いて完成させていますが、このあと汚しを入れてリアル感を出しています。このモデルも楽しみました。

でも私にとってはベストワンではありません。

これまでも、これからも、私のベストワンプラモは、「1/25パンサー」!!
中学2年のここまで、いくつプラモを作ったかわかりません。またこのあとも、たくさんのプラモを作っています。中には嬉しくもコンクールに入賞したものもありますし、遙かにうまく作れたものもあります。

でも、これからどんなプラモが登場しても、私の生涯最高のプラモは1/25パンサー。それは次のページを見ればわかるはず・・。